もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
◇
(やったわ!)
マルティーナ・ミア子爵令嬢は、第二皇子の近衛兵たちにあっという間に取り押さえられた。
だが彼女は焦ることなく、満足げに笑みを漏らす。
手元の魔道具の蓋は確実に開いている。自分には空っぽに見えるが、間違いなく発動しただろう。
そして目の前には、アンドレア第二皇子殿下と……他人の恋路を邪魔する憎きリグリーア伯爵令嬢。
以前、ダミアーノからこの魔道具の効果を教えて貰ったことがある。
これは他人を操る魔法が込められているらしい。それは、今では使用禁止されている恐ろしい魔法だ。
(たしか……魔女が使っていた闇魔法だってダミアンは言っていたわ。強力な惚れ薬だって。皇太子の次は第二皇子に手を出して、無様な姿を社交界へ晒しなさい!)
魔力量の微弱な彼女には見えなかったが、魔道具から放たれた魔女の力のマナは爆発したように一瞬で広がっていった。