もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
「……!」
その時、第二皇子と子爵令嬢の目が合った。
刹那、マルティーナの心臓が、身体から出て行くくらいにビクリと跳ね上がる。
(なんてイイ男なのかしら……!)
みるみる頬が熱くなるのを感じた。胸の奥底からときめきが溢れ出て来る。ビリビリと電撃が肌を伝った。
これまで生きてきて、こんなに魅力的な殿方はいただろうか。
たしかにダミアーノは格好良い。整った顔立ちと、中性的な雰囲気が物凄く好きだった。
それに公爵令息だし、明るい将来は約束されているし。……彼女にとって理想的な恋人だったのだ。
しかし、眼前の皇子様は、それ以上に魅力的だった。
少しオレンジがかっている金髪はさらさらと風になびいて、森の置くにある泉のような青緑の瞳はきらきらと光を反射していた。それは絵本に描かれている白馬の王子様そのものだった。
彼が、欲しい。
ダミアーノなんかじゃなくて、本物の皇子様が欲しい。
マルティーナの本能が、体の芯から叫んでいた。
(このような魅力的な令嬢がこの国にいたとは……!)
一方、アンドレアの心臓は鷲掴みにされたみたいに、ぎゅっと強く締め付けられた。
根っからの遊び人の彼は、美女と形容される多くの女性たちと関係を持っていた。その結果目が肥えて、ちょっとやそっとでは女性に対してときめくことなどなかったのだが……。
しかし、この胸の高まりはなんだろうか。
彼の鼓動は速まるばかりだった。目の前の令嬢を見ているだけで、欲望が無限に込み上げてくる。その可愛らしい丸い瞳も、ぷっくりとしたピンク色の唇も、華奢な身体もーー全てが愛おしいと思った。
欲しい。彼女が欲しい。
彼女の全てをむしゃぶりつきたい。
アンドレアは肉体の奥底の、純粋な本能が求めていた。