もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
もう無様な繰り返しはごめんだった。
今回も復讐をしようと決断しても、どうせまたダミアーノを愛してしまって破滅へ向かって一直線になるに決まっている。
そうなる前に、ここから逃げ出したかった。
そのためには、今すぐにでもダミアーノと婚約破棄。
でも持参金目当てのヴィッツィオ家も、名誉が欲しいリグリーア家も簡単に許してくれるはずがない。
そこで、買収なのだ。家門が払う予定の持参金と同じ――いや、倍以上の金額を払うのなら、おそらくヴィッツィオ家は納得してくれるはず。
かなりの確率で両親は激怒して勘当されると思うが、どうせ一人で生きるつもりだから構わない。むしろ、自由になれてラッキーだ。
幸いにも、キアラには過去の記憶があった。
六回分の膨大な記憶。ダミアーノの公爵見習いの仕事を手伝っていた彼女は政治や経済も令嬢にしては通じていて、事業をはじめる知識は十分だった。
そう……自分には未来が分かる。これから何が流行するのか、大きな事件、貴族の派閥間の陰謀……。
まるで神様になったみたいに全てを知っていた。
この知識を武器に、やれるはず。
(お父様は婚約破棄の手切れ金なんてくれるはずがないので、自分で稼ぐしかないわ……!
最初は、貯めていた毎月のお小遣いで首都に小さな商会から始めましょう。
もし文句を言われたら、これまでのお小遣いを10倍にして返却してやればいい!)