もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

 外は、地獄絵図だった。
 令嬢たちは勿論、皇子の近衛兵や臣下までパニックに陥った。
 皇子の求愛が公衆の面前で行われ、目撃者は軽く100人は越えている。もう箝口令など効果がないだろう。


 キアラはその様子を冷静に眺める。彼女の思惑通りだった。
 あとは仕上げに二人の愛を確実なものにするだけだ。

 彼女は静かに魔法をかけた。人工の紛い物ではない本物の魔女のマナを、福音のように彼らに降り注がせる。
 マルティーナが魔道具を使って、自分を貶めようとするのは予測していた。今回はそれを逆手に取ることにしたのだ。


 甘ったるいキスが終わったあと、アンドレアはマルティーナの腰をぐいっと抱いて自身に密着させた。
 そして、

「私、アンドレア・ジノーヴァーは、皇族として、今ここに宣言する! マルティーナ・ミア嬢と婚姻をすると!!」

 彼の朗々とした声が会場中に鳴り響いた。
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