もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜





 派手な婚約宣言後、第二皇子と子爵令嬢はその脚で教会へ向かおうとしていた。この勢いで婚姻の儀式をするつもりだったのだ。
 通常なら臣下が皇子――しかも恐ろし皇后の嫡子の行動を止めるのは恐れ多く、側近たちは見て見ぬ振りをしていた。

 だが、今回はさすがに不味いと焦り、アンドレアたちを全力で止めた。
 しかし皇子は物理的な抵抗をしてきたので、やむなく護衛が二人を気絶させて王宮へと連れ戻したのだった。

 第二皇子が王宮へ戻ると、直ちに皇后の精鋭たちが調査に入った。これまで全く面識のなかった子爵令嬢と突然の婚約宣言は、なにか陰謀が関わっていると思われたのである。

 皇后はすぐに魔女のマナが関わっていると疑った。他に理由が見当たらないのだ。

 調査の結果はすぐに出た。
 ヴィッツィオ公爵令息に託した魔道具をミア子爵令嬢が持ち出して、アンドレア第二皇子に使用した……という経緯(いきさつ)だった。
 魔道具の秘密を知ったマルティーナが、皇子と結婚したくて無断で持ち出して魔道具を発動させたようだ。

 当然、皇后は大激怒した。
 第一に、機密扱いの魔道具の使用法や効能を部外者に漏らしたこと。
 第二に、重要な魔道具を外部に持ち出されたことを、だ。

 それに加えて馬鹿息子のやらかしである。
 彼女は様々な感情が混じり合い、血が沸騰しそうになって、その憤りを目の前に立つ公爵令息へとぶつけたのだった。

(全く、無能が多すぎる。自分の周囲は馬鹿しかいないのか……)
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