もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

29 繋がった

「最悪だ……最悪すぎる……」

 皇后ヴィットリーアは絶望に打ちひしがれていた。

 力なく椅子にもたれ掛かって、がっくりと(こうべ)を垂れ、ぶつぶつと呪詛を吐くように呟く。深いためいきも定期的に聞こえた。
 そこには、普段の背筋を真っ直ぐに伸ばし、凛とした皇后の姿はどこにもなかった。

 これほどの挫折感を味わったのは、いつぶりだろうか。
 否、今まで生きてきて初めてかもしれない。

 彼女の人生は全てが順風満帆とはいかなかったが、どんな困難も頭脳と努力で乗り越えてきた。そうしての皇后の座にまで上り詰めたのだ。

 先に側室が皇帝の子を産むという不測の事態はあったものの、まだ挽回は十二分に可能な状態だ。皇后という絶対的な身分と陰謀で、皇太子の立場を奪う機会はいくらでもあるのだ。
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