もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

 だが……我が大馬鹿息子のせいで、それも困難になりつつある。

 アンドレアの女癖の悪さは周知だった。英雄色を好む――将来、皇帝になる者なのでそのような性質も仕方のないと思っていた。むしろ、女を知らない王のほうが気色悪い。

 それに、万が一なにか問題が起こった時のために、監視の目は光らせていた。最側近には皇子の愚かな行動を止める権利も与えていた。
 だから、このような大スキャンダルに発展するような事態が起こることなど、ないはずなのに……。

 既に、第二皇子の子爵令嬢との婚約宣言は、社交界のみならず平民にまで知れ渡ることになってしまった。しかも、皇都では身分違いの恋に庶民たちは大騒ぎだ。

 彼女はすぐにでも子爵令嬢とその一族を暗殺するつもりだったが、現状だと子爵家の不自然な死は、真っ先に皇族――そして皇后に疑惑が向くだろう。
 となると、アンドレアの皇太子の椅子は遠のいてしまうかもしれない。

(愚民どもがっ……!)

 皇后は皇族らしくない下品な舌打ちをする。
 脅威ではないが数の多い平民を敵に回すのは今は得策でないと思った。いや、そもそも彼らがスキャンダルを忘れる日など来るのだろうか……。
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