もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

(なにか引っかかるな……) 

 妙な違和感が、胸の奥につかえていた。
 不意を突かれた皇太子の婚約発表以来、おかしなことが多すぎる。それも、こちらに不利なことばかりだ。

(見落としていることは……)

 皇后は深く深呼吸をしてからゆっくりと瞳を閉じる。
 一度、冷静になって考えたほうがいい。

 アンドレアとマルティーナには解除の魔道具は効かなかった。
 そこから導かれることは、二人が魔道具など関係なく相思相愛。または……魔道具よりも強力なマナを持つ、別の魔法が掛かっているということだ。

 裏切り者がいて、研究を盗み出されたのだろうか。
 いや、研究施設は幾重にも鍵や魔法で守られているし、魔法契約で謀反者はその瞬間に肉体が燃え上がることになっている。
 なので、その確立は低いはずだ。

(ならば……魔道具以上のマナの力? 魔女のマナを持つ者など、この世には、もう――……!?)

 その時、皇后は弾けたように顔を上げて、息を呑んだ。無造作にばらけていたピースが繋がり始める。

 皇太子の急すぎる婚約。まるで強奪するようだった。
 あの時はあの用心深い男が、女に溺れてこのような浅はかな真似をするのだなと喜んだが……そもそも、その前提が間違っているとしたら?
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