もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
以前、ヴィッツィオ公爵令息が「伯爵令嬢に魔道具が効かない」と報告がきたことがあった。
散々テストを重ねて完璧に作り上げたのにそんなはずがないと調査をしたところ、現になんの問題もなかった。
しかし、二度目も魔道具は不発に終わったのだ。
研究者の見解によると、リグリーア伯爵令嬢が貴族のくせに魔力を持っていないので、効果が薄いのではないか……という結果になった。
魔力の持たない平民の中には、魔力の効果を全く感じない者もいるらしい。だから令嬢もそういう体質なのだ、と。
皇后はごくりと喉を鳴らす。
にわかに興奮して、顔が蒸されるように熱くなった。
(もし……リグリーア伯爵令嬢が、魔女のマナの持ち主だとしたら…………?)
そう仮定すると、全ての事柄の辻褄が合う。
伯爵令嬢は魔女のマナの持ち主だから、魔道具がきかなかった。
伯爵令嬢は魔女のマナの持ち主だから、魔道具でも消せない別の魔法を二人にかけた。
伯爵令嬢は魔女のマナの持ち主だから、皇太子は強奪してでも早急に彼女を手に入れた。
ヴィットリーアは、ニヤリと口元の端を歪ませる。
(皇太子は伯爵令嬢が魔女のマナの持ち主だと知っている……!
そして、令嬢も承知の上で、手を組んでいる……!)