もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
◇
物件探しで街を散策の途中、ふとキアラの目にある店の看板が入ってきた。
(魔道具屋……?)
何の変哲もない看板なのに、なぜか彼女は釘付けになる。
魔法の使えない彼女には関係のない店だったが、どことなく惹かれるものがあってフラフラと光に集まる蝶のように誘い込まれていった。
カランと音を立てて扉を開ける。店の中は夕暮れみたいに薄暗くて乾燥した埃っぽい空間で、不安定な空気に思わず顔をしかめた。
それでも誘惑には勝てずに、店に並べられてある商品を眺める。造形は美しいと感じたが、何に使うのかよく分からなかった。
(魔法か……)
ふっと軽くため息をつく。魔法は貴族ならば使える者が多いけど、キアラの中には少しも魔法を行使できるマナが宿っていなかった。
(たしか一人に一つの属性の魔法が使えて、他属性の魔法は魔道具でマナを変換させて発動できるんだっけ……?)
自分にも魔法が使えたらダミアーノを倒せるのにな……と、彼女はちょっと羨んだ。