もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

「魔女の魔力を抑制するその指輪は必ず身に付けて、瞳の色を変化させる魔道具も忘れないように。効果が切れていないか、ジュリアに5分ごとに確認してもらいなさい」

「5分は……早過ぎなのでは?」

「なら10分だ」

「せめて1時間でしょうね。それも多いかも」

「……30分だ」

「要所要所で確認して貰いますから」

「……。絶対に闇魔法は使うなよ」

「心配性ですね」

「君を失いたくないからな」

「っ……!」

 婚約者の真っ直ぐすぎる言葉にキアラは頬を赤くするが、すぐに魔女のマナのことだと気付いて恥ずかしくなった。
 自分の価値は、この闇魔法のみ。だから皇太子と婚約をしたのだ。目的のための仮の婚約だ。

 ……もっともレオナルドとしては、キアラ自身のことを指しているのだが。



 翌朝、レオナルドは壮行会もせずに少数の騎士たちを率いて、再び東部へ向かった。万が一本当に反乱が起こった場合、大規模な軍隊だと刺激をする可能性があるからだ。

 皇都から東部まで通常なら馬車で一ヶ月、急いでも馬で二週間かかる。
 現地での反乱の鎮圧と事後処理、そして帰りの時間を考慮して、少なくとも約三ヶ月ほどは皇都で一人ぼっちなのだろうとキアラは思った。
 次の瞬間、自嘲気味に笑みを漏らす。

(ぼっち、って……。別に、契約の関係なのにね。それに過去六回もずっと一人きりだったから、慣れているし……)

 一人になっても商会の仕事で忙しいし、皇后の偽のマナの調査もあるし、特に構わないのだけれど……。
 何故か、キアラの心は妙な寂しさを覚えたのだった。







「なんでっ……! なんで、わたしが公爵令息なんかと一緒にならないといけないのよっ!?」

「それはこっちのセリフだ……!」

 それから半月もしないうちに、社交界を揺るがすとんでもない発表があった。

 第二皇子が婚約宣言をしたマルティーナ・ミア子爵令嬢が、なぜかダミアーノ・ヴィッツィオ公爵令息と婚姻を結んだのである。
 婚約もなく、速やかに。
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