もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
32 最悪の結婚生活
「なんでっ……! なんで、わたしが公爵令息なんかと一緒にならないといけないのよっ!」
「それはこっちのセリフだ……!」
ヴィッツィオ公爵家で、今日も若い夫婦の大喧嘩が始まる。
それは、正式に婚姻が決まって子爵令嬢が初めて公爵家に足を踏み入れた日から、今日までずっと続いていた。
従者たちは最初はおろおろと二人の様子を見守っていたが、今れはすっかり慣れてしまった。彼らはこの低俗な嵐が通り過ぎるのを樹木のように静かに待つだけだ。……正直、うんざりだが。
マルティーナは可愛らしい顔面が醜く歪めながら言う。
「本当に最悪。ドレスも宝石も買えないし、屋敷も思ったよりショッボ。晩餐なんて、平民の商人のほうが豪華なんじゃない?」
「……嫌なら出て行けと何度も言ったはずだ」
「それが出来るなら、すぐにでも出て行くわよっ!!」
マルティーナの金切り声が玄関ホールに響いた。怒りのあまり顔を真っ赤にさせて、息も荒くしている。
そんな元・可愛い恋人に、ダミアーノは氷のような冷たい視線を一瞬だけ向けたと思ったらすぐに興味なさそうに顔をそむけて、執事との会話を再開させた。
新婚の夫婦の間には、キスもハグも、挨拶さえもない。
二人の目線が交わることもなく、そのままダミアーノは屋敷を出て行った。
「それはこっちのセリフだ……!」
ヴィッツィオ公爵家で、今日も若い夫婦の大喧嘩が始まる。
それは、正式に婚姻が決まって子爵令嬢が初めて公爵家に足を踏み入れた日から、今日までずっと続いていた。
従者たちは最初はおろおろと二人の様子を見守っていたが、今れはすっかり慣れてしまった。彼らはこの低俗な嵐が通り過ぎるのを樹木のように静かに待つだけだ。……正直、うんざりだが。
マルティーナは可愛らしい顔面が醜く歪めながら言う。
「本当に最悪。ドレスも宝石も買えないし、屋敷も思ったよりショッボ。晩餐なんて、平民の商人のほうが豪華なんじゃない?」
「……嫌なら出て行けと何度も言ったはずだ」
「それが出来るなら、すぐにでも出て行くわよっ!!」
マルティーナの金切り声が玄関ホールに響いた。怒りのあまり顔を真っ赤にさせて、息も荒くしている。
そんな元・可愛い恋人に、ダミアーノは氷のような冷たい視線を一瞬だけ向けたと思ったらすぐに興味なさそうに顔をそむけて、執事との会話を再開させた。
新婚の夫婦の間には、キスもハグも、挨拶さえもない。
二人の目線が交わることもなく、そのままダミアーノは屋敷を出て行った。