もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
◇
(アンドレア様は、いつ迎えに来てくださるのかしら……?)
冷たいベッドの上で、マルティーナは今日もさめざめと泣く。
恋人への想いは募る一報だった。あんなに愛し合っていたのに、騎士たちに強制的に引き剥がされて、軟禁されて、毎日のように魔道具や魔法陣の実験台にさせられた。
やっと扉が開いたと思ったら、冴えない公爵令息との結婚だ。
自分の恋人は第二皇子なのに、意味が分からなかった。
いくら抗議をしても、返事は「皇后陛下のご命令です」だけ。
(きっと子離れできない母親が、可愛い息子を取られまいと意地悪をしているんだわ)
にわかに、彼女の中に激しい怒りの炎が湧き上がった。愛し合う男女が結婚するのは当たり前で、それは誰からも侵害されない権利だ。いくら肉親でも邪魔はさせない。
アンドレアが迎えに来ないのは、おそらく彼はまだ軟禁状態で、恋人に会いに行きたくとも一歩も外に出られない状態なのだろう。
ならば、やることは一つ。
(わたしがアンドレア様を救いに行かなきゃ……!)
彼女の覚悟は、既にもう決まっていた。
馬車の揺れと蒸し暑さが、ますますダミアーノを苛立たせた。今日は久し振りに皇后との謁見が叶ったが、気分は重く、窓の外の景色もどんよりと薄暗く思えた。
しかし、いつまでも意気消沈しているわけにはいかない。
皇后の信頼も消え失せ、現状のままではヴィッツィオ公爵家は没落する一方だ。なんとか、突破口を開かなければ。
己の輝かしい未来の計画の全ての歯車が狂ったのは、キアラ・リグリーアのせいだ。
何がなんでも、あの女だけはこの手で沈めたい。ついでに皇太子も刺すことができたら、皇后陛下から再び目にかけてもらえるはずだ。
彼の覚悟も、既に決まっていたのだ。