もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜





「久しいな、ヴィッツィオ小公爵。そなたから面会の申し出とは、珍しいことだ」

「ご無沙汰でございます、陛下。ご機嫌麗しゅう」

「ふんっ。機嫌など良くないわ。お前たち夫婦のせいでな」

「……返す言葉もございません」

「新婚生活はどうだ?」

「お陰様で、私も妻も障りなく過ごせております」

「そうか。新妻の管理は怠るなよ」

「勿論でございます」

「……して、今日は私に何の用だ?」

 皇后は壇上からダミアーノを見下ろす。二人の視線が交差した途端、彼の背中にゾクリと悪寒が走った。
 彼女の瞳には温かみなど少しも含まれておらず「お前は既に戦力外なのだ」と通告しているように感じた。悔しさと焦燥感が彼の胸を掻きむしった。

 だが、今日はかつてないほどの強い覚悟を持ってここへやって来たのだ。これくらいで怯んではいけない。
 幸いにも、皇后は自分からの謁見を拒否していない。
 ……まだ、希望は残っている。
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