もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
レオナルドのほうは違っていた。夢にまで見た憎き伯爵令嬢の顔をみとめた瞬間にカッと全身が熱くなって、血が沸騰しそうになる。
(何故ここにキアラ・リグリーアがいる……!?)
彼の記憶が正しければ、伯爵令嬢はまだ表舞台に立っていない。それに魔力のない彼女がこの店に来るなんて……。
(婚約者の使いか? 皇后派閥はこの時点でもう動いていたのだな……)
そんな皇太子の異様な空気を彼女は嗅ぎ取って、心配そうに声をかけた。
「私は問題ありません。あの……あなたのほうこそお怪我はありませんか? 大丈夫でしょうか?」
緊張感を孕んだ嫌な沈黙。
レオナルドは返事をしない。
キアラがどうしようかと首を傾げていると――、
「っ……!?」
にわかに皇太子が剣を抜いた。