もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜


(あの中は、空っぽなのにね……)

 キアラはそんな様子を無表情のまま眺めている。そこには何の感情も浮かんでいなかった。
 やがて、マルティーナの首が断頭台の真下に固定された。

「止めなさいっ! わたしはっ……!」

 彼女は叫び続ける。
 観客は静かだった。
 刃物が下ろされた。

「あぁっ……アンドレアさ………………」

 ころりと頭が転がった。
 誰も一言も声を上げない。
 夢など最初から無かった。


「これより、この女が妊娠していないことを証明する」

 おもむろに処刑人が彼女に近付き、周囲に見えるように腹を見せ、
 掻っ切った。

 ざわめき。悲鳴。嘔吐。
 中に入っていたのは、血と肉と大量の水だった。

 そこに命など、宿っていない。



 阿鼻叫喚の中で、キアラは静かに踵を返す。
 そんな彼女をじっと見つめている者がいた。

「魔女め……」

 ダミアーノ・ヴィッツィオ――彼はあんなに愛していた元妻の最期の瞬間など少しも見てはいなかった。
 彼の視線の先には、キアラしかいない。


 
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