もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
「まぁた、皇太子殿下のことを考えているんですか〜?」
「へぁっ!?」
出し抜けにジュリアに声を掛けられて、キアラは思わず素っ頓狂な声を上げた。
「べ、別に……。そんなことは……」
ドキドキと鼓動が速くなり、頬が熱くなった。
確かにほんの少しだけレオナルドのことを考えてはいたが、それは彼のある意味「復讐」を手伝うからであって、そもそも、私たちは利益で繋がった同志だし、互いに上手く利用しているだけだし……。
(ちょ、ちょっと待って! 今、「また」って言った? 私、そんなに彼のことを考えているかしら……!?)
「あらぁ〜、図星ですねぇ〜。当たっちゃいましたぁ〜〜」と、侍女はニヤニヤと目を細めながら言う。
「馬鹿なこと言わないでよ」と、子供みたいに口を尖らすキアラ。
ジュリアはへっへ〜と笑いながら舌を出して、
「だって、皇太子殿下が絡むと、キアラ様は面白くなりますから」
「おっ……面白い!?」
「年相応で、からかいがいがあると言うか」
「あのねぇ」
「だってキアラ様って妙に達観してるじゃないですか。何でも知っていて、まるで人生二周目ってかんじ」
「っ……」
ぬるりと冷や汗が出て、言葉に詰まった。
逆行の繰り返しはひた隠しにしているつもりだ。だが無意識に、それを予感させるような軽率な行動を取ってしまっていたのだろうか。
(ただでさえレオナルド様に魔女のマナを知られてはならないって言われているのに、こっちのほうも気を付けないと……)