もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
「こちらです!」
護衛に誘導されて、キアラたちは商会の裏口から出る。建物の向こうから、人の泣き叫ぶ声や獣の鳴き声が聞こえてきた。
「魔獣の性質上、馬車は却ってあれらの的になってしまいます。恐縮ですが、走って避難場所へ向かいましょう」
キアラたちはひたすら走った。
次第に人が集まって多くなる。子供を抱えた母親、大事な商売道具を持った職人、財産を投げ出して来た商人……街中の全ての人間が避難場所である宮殿の門へと急いでいた。
途中、馬の蹄と鎧の擦れる音が聞こえてきた。きっと騎士や魔導士たちが到着したのだろうと安堵する。
あの日襲撃された商会の倉庫から感じたマナは、魔力量はそれほど多くは感じなかった。なので、全ての個体が倒されるのも時間の問題だろう。
自分たちは、それまで彼らの足手まといにならないように、なんとかやり過ごせばいい。
もうじきレオナルドも帰還する。そうしたら、この魔獣騒ぎも彼が調査することだろう。