もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
「それに、証拠もあるのだろう? ヴィッツィオ小公爵?」
先に皇后が動いた。
「勿論でごさいます、皇后陛下。半月前に、伯爵令嬢の所有する商会の倉庫が魔獣によって荒らされた事件がございましたが……。魔道具により測定したところ、彼女が持つマナと同じものが検出されました」
「つまりは、令嬢の自作自演か? 良からぬ実験でもしていたのかのう?
――例えば、魔獣たちに皇都を襲わせる予行練習とか?」
皇后の衝撃的な発言に、議会がざわめき立った。
「それは単なる憶測です。邪な推測で彼女を侮辱する発言は控えていただきたい」
レオナルドが強く抗議する。
またぞろ二人の間で火花が走った。
「だか……リグリーア伯爵令嬢が、何かしらの魔法を使用したのは確かなようだ」
ずっと沈黙を保っていた皇帝が、重く息を吐く。途端に荘厳な空気で満たされて、周囲の貴族たちは背筋を正した。
「彼女は生まれつき魔法が使えなかったはずだが、どうなのだ? 婚約者から何も聞いていないのか?」と、皇帝は皇太子に視線を向ける。
レオナルドは真っ直ぐに視線を返して、
「私も、彼女からは魔法は使えないと聞いております。ただ、戦場では危機に瀕した者が突如として魔力に覚醒する事象がございます。今回の件は同様の力だと存じます」
「ふむ……」
皇帝は顎を持って思案する。
帝国では、魔法に関しては皇太子の右に出る者などいない。それに、息子は妻より誠実だし、測定に使用した魔道具とやらも公的な魔導機関で認可されたものではない。
ならば、ここは皇太子のほうを信じるべきだろうか。