もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
皇帝が手を挙げる。始まりの合図だ。途端に会場はしんと静まり返った。
レオナルドはマナを全身を覆い防御魔法の盾を作り、キアラは瞳を閉じて体内のマナの流れを感じるのに集中している。
沈黙。
張り詰めた緊張。
全員が固唾を呑んで見守っている。
少しして、キアラの赤い瞳がカッと開いた。
「マナよ!」
黒色の電撃がとぐろを巻きながら彼女の両手から起こって、一直線に彼の肉体へ飛ぶ。
――バチンッ!
「ぐっ……!」
雷はレオナルドの防御を容易く貫いて、彼の右肩に激突した。彼はよろめきながら一歩後退する。
観客からどよめきの声が上がった。
「っ……!」
キアラの顔が歪む。レオナルドの肩が黒く焼け焦げ、赤いものが垂れていた。
「……」
皇帝は真剣な顔つきで彼らを見下ろしている。
(愉快、愉快)
皇后はニヤリと口の片端を上げた。
(これは共倒れだな)
高位貴族の席では、ダミアーノが薄笑いを浮かべている。彼もまた皇太子と伯爵令嬢の破滅を見物に来たのだ。
己を貶めた憎き二人が、じわじわと不利な状況に追い込まれていく様はおかしくてたまらなかった。
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長いので分割します。