もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

「もう嫌っ……」

 先にキアラの心が折れた。
 彼女は膝を付いてさめざめと泣き始める。二人の騎士が彼女の両脇を抱えて立たせようとするが、頑として動かなかった。

「キアラ・リグリーア! 中断は陛下への反乱とみなす!」

「お前は自身が魔女だと認めるのだな?」

「うっ……!」

 立ち上がらなければいけない。立って、続けなければ。
 頭では分かっていた。ここで止めたら、全てが終わってしまう。そんなの、ダミアーノや皇后の思う壺だ。七回目も私たちは敗北することになるのだ。

(そんなの、絶対に駄目……!)

 だが、脚が震えて、もうこれ以上力が入らない。

「キアラ嬢」

 その時、声が聞こえた。なんの曇もない、爽やかな声だった。
 顔を上げると、レオナルドが優しく微笑んでいる。

「私は問題ない。続けなさい」

「レオナルド様……!」

「ほら、死んでないだろ? 心配しないように」

 溢れる涙は止まらなかった。満身創痍の彼。肉体はもう限界に近いのに、安心させるために平然と笑ってくれて。

(なんで……。なんで私なんかのために、ここまでっ……) 

 私が不条理にリンチしているようなものなのに。
 なぜ、平気でいられるの?

 思えば、他にもおかしいと思うことはいっぱいあった。六回も自分を殺した相手なのに、殺したいほど憎んでいい相手なのに、気遣って、慈しんで、敬ってくれて。

 そんな資格のない私なのに、なんで、なんで……。
 こんなに無償の愛をくれたら、私も、あなたを……。

 私は――、

「もう、(あなた)を愛したくないのに…………」

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