もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
「ぐっ……」
「レオナルド様!」
片膝を付いたレオナルドに、キアラが急いで駆け寄って彼の身体を支えた。綺麗な顔が涙でぐしゃぐしゃになっていた。
「申し訳ございませんっ……私の、せいでっ……」
「何を言ってるんだ。はじめから何もなかったんだよ」
「そんな……」
レオナルドは愛おしそうにキアラを見る。それから彼女の額を軽く指で弾いてから、皇帝のほうへ顔を向けた。
「陛下。ご覧の通り、私はなんともございませんでした。ですので、彼女は魔女ではありません。
また、魔法に覚醒したばかりの者は、己のマナを制御できない傾向がございます。彼女のマナの量はあまりに膨大です。
それこそ、私以上の力を持っております。なので、目覚めたばかりで力が暴走しただけでしょう」
「なにをっ――」
皇后が反論しようとすると、皇帝は手を払って牽制した。
「…………」
皇帝はしばらく黙って皇太子を見つめていた。緊張が背中を走る。キアラはなんとか上手くいくように、見守るしかなかった。
数拍して、
「そのようだな。――リグリーア伯爵令嬢は魔女ではない。公式文書に記録しておくように」
それだけ言って皇帝は踵を返した。
キアラとレオナルドは顔を綻ばせて、互いを見つめ合った。
二人ともぼろぼろだ。それでも、とびっきりの笑顔を向けあった。
これで、魔女裁判は一件落着だ。
だが、彼女は婚約者と話し合わなければならない。ちゃんと過去と向き合わねば。
「レオナルド様、私は、あなたにお話したいことが――」
「きゃあぁぁぁっ!!」
次の瞬間、場内で悲鳴が沸き起こる。
広場を囲うように、魔獣の群れがやって来たのだ。