もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

43 無限の魔獣 ※少しだけバトルシーンあり

 数え切れないくらいの魔獣の群れが、広場を包囲する。文字とおり魔法のように唐突に出現したそれらに対して、騎士たちは迎え撃つ準備が十分に出来ていなかった。

「うわあぁぁぁっ!!」

 最初に犠牲になったのは、大勢いた平民たちだ。周囲をぐるりと魔獣の群れに囲まれて逃げる場所もなく、腹をすかせた獣たちの餌食になっていく。

 レオナルドは立ち上がり、剣のグリップを掴む。

「ぐっ……!」

 だが、すぐさま膝を付いた。さっきの魔女裁判でマナを殆ど使い切り、身体を支えるのも一苦労だった。

「レオナルド様はしばしお休みくださいませ! ここは私が!」

「キア――」

 皇太子の返事も聞かずに、キアラは魔獣の中へ転がるように飛び出した。
 黒い(いかずち)が轟く。あっという間に数体の魔獣が消し炭になった。

 だが、群れは最後尾が見えないくらいに続いている。とてつもない数だった。



「ここは危険だな。城へ戻るぞ」

 平民が次々に襲われる様子を呆然と見ていた貴族たちは、皇后の一言ではっと我に返り裏口へと急いだ。

 しかし、ダミアーノ・ヴィッツィオ小公爵だけはその場に残る。自分だけは安全だと確信していたからだ。
 皇后は気付かれないくらいの一瞬だけ彼と目配せをして、優雅に場を去った。あとは、吉報を待つのみ……。

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