もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
レオナルドもまた回帰を繰り返していた。
最初の人生はあっとういう間だった。やっとの思いで北部を制圧して凱旋したら、政務で忙殺される日々。
能力の高い彼は、常に必要以上に仕事を抱えていた。そして気が付いたら大逆罪で処刑……。
二度目の人生では前世の自分への陰謀を調査した。案の定皇后派閥の仕業で、信頼していた臣下の中にも裏切り者が何人もいた。
彼は強く決意した。
今度こそ、皇后に勝ってみせると。
だが、彼の努力の全てが徒労に終わる。
皇太子の身分にとって歯牙にもかけないような人物――全くのノーマークだったキアラ・リグリーア伯爵令嬢の登場だ。
その次も、そのまた次も。まるで自ら死に向かっているかのような捨て身の伯爵令嬢の行動に、彼の復讐計画は狂わされ、ことごとく皇后派閥に敗北していったのだった。
彼にとって伯爵令嬢は恐怖の対象でもあった。
彼女は自分を陥れるためならどんな手でも使う。それは感情のない虚ろな目をした人形のように、底知れぬ不気味さを帯びていた。
なので今回は過去に逆行したら、真っ先にリグリーア伯爵令嬢を殺そうと思った。
そうすれば自身の最大の敵が消える。彼女のように自らの命を犠牲にしてまで、捨て身の攻撃を仕掛けてくる人物はそうそういないだろう。
だから、殺すのだ。
でも、自分にはできなかった。
なんで…………。