もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
「キアラ、悪いが君はこのまま戦闘に加わって貰う。いいか?」
「私も戦います。それで、レオナルド様もお気付きかと存じますが、あの大量の魔獣は魔法で転移させているようですね。入口を探しているのですが……」
「あぁ。例のマナなのは間違いない。だが、あれは他所から魔獣を転移させているのではない」
レオナルドは肌が張り付きそうなくらいキアラに顔を近付けて、小声で言った。
「彼らは魔獣そのものを作り出している」
「っ……」
思考が止まって、身体を固くする。一瞬、彼が何を言っているのか分からなかった。
生き物を作り出すなんて、神のような真似が出来るの?
「正しくは、生物を魔獣に変えている……ということだ。ゼロから作り上げているわけではない」
「あっ、それでしたら闇魔法で可能かもしれません。皇后の不自然な若返りと似た理論なのかも……。でも、よく気付きましたね」
レオナルドは頷く。
「東部でも魔獣の大群が襲って来たんだ。そのときに調べた。最悪なことに、虫のような極小のものからも魔獣化が可能なようだ。因みに、強さはマナの量に比例するらしい」
「それは……」
恐ろしい事実にキアラは口を閉ざした。
虫なんてそこかしこにいるし、数も無尽蔵だ。仮にこの大量の魔獣の正体が羽虫だとしたら、無限に湧いてくるのも納得だ。
「レオナルド様が東部へ向かったのも、皇后の差し向けと……」
「そうなるな。皇都に戻ってきて驚いたよ。第二皇子絡みの事件とかな。俺が宮廷から離れている間に、皇后が不穏な動きをしていたらしいな」
「今や皇后陛下の最大の障壁は皇太子殿下ですから」
レオナルドは答える代わりにふっと笑ってみせた。久し振りに会えた婚約者ともっと話したいところだが、お楽しみは全てを片付けてからにしよう。
「我々が探すのは、魔獣を操っている魔道具の持ち主だ」
「承知しました。先ほどからマナの流れを追っているのですが、一つに絞れられなくて………………!?」
その時、目が合った。
ダミアーノ・ヴィッツィオ小公爵だ。