もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜



(気付いたか……)

 ダミアーノは苦々しく舌打ちをする。だが、彼の表情はまだ余裕があった。

 思いのほか見破られるのは早かったが、十分に時間稼ぎが出来たはずだ。今さら魔道具を破壊されても、すぐに次の仕掛けが待っている。

 彼は魔獣と戦っている忌々しい元・婚約者を眺める。顔を見ているだけで腸が煮えくり返るようだった。

 あの女――キアラ・リグリーアのせいで輝かしい自分の人生は無惨にも破壊されてしまった。元・恋人(マルティーナ)は不貞をおこない、そのせいで自分の地位も危うくなった。

 全てがキアラのせいなのは明白だった。

 一体、自分が何をしたというのだろうか。
 公爵家の跡取りとして、正しい道を選択したかっただけなのに。

 あの女は、本当に魔女だった。他人(ひと)の運命を破滅に導く禍々しい魔女。
 だから、皇太子もろとも今ここで始末をしなければ……。

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