もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

「はっ! 偉そうな口をきけるのも今のうちだ!」

「いや、実際に私は貴公より身分が上なのだが?」

「うるさいっ! ……絶対に殺してやる!!」

 ダミアーノはパチンと指を鳴らす。すると、周囲の者が一斉に魔道具でレオナルドに攻撃を開始した。
 瞬時に魔法陣が現れて、黒い電撃が槍のように鋭く飛んでくる。

 しかし、レオナルドは冷静にそれらをマナで打ち消した。

「何っ!?」

 敵たちは目を見張る。これまでより強力なマナの量なのに、いとも簡単に破るとは。一体、何故……?

 レオナルドは悠々と攻撃に応じた。全ての魔法を相殺する。
 さっきの見えない攻撃とは異なり、攻撃する者が見えていれば対策は簡単だった。どのように莫大な魔力でも、皇太子の持つマナに比べればこの大陸で彼の右に出る者はいない。

 それに、魔女のマナに対抗しうる力に目覚めた彼にとって、人工的な紛い物のマナなど、たとえ強化した状態でも敵ではなかった。

 彼は短くため息をついて、

「やれやれ……。馬鹿の一つ覚えのような攻撃だな」

 次の瞬間、
 目に見えない速さの皇太子の一閃で、敵は皆倒れた。

「くっ……」

 レオナルドはニヤリと口元を上げて、

「貴公らのお陰で、皇后の陰謀の素晴らしい証拠品を手に入れることが出来た。感謝する」

「くそっ! ふざけるな!」

「ま、こんなに騒ぎを起こせば、目撃者は大勢いるとは思うが。皇后命令による皇太子暗殺未遂のな」

「はっ、それは心配するな。ここにいる目撃者は全員殺すからなっ!!」

 ダミアーノは魔道具に己のマナを注入する。そして、連続攻撃。黒い(いかずち)が滝のようにレオナルドに降り注いだ。

 鼓膜に響くような爆発音が止まない。爆風がどうっと吹きすさぶ。魔獣と戦っていた騎士たちが、思わず手を止めて凝視するほどだった。
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