もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

47 七度目の正直  ※処刑シーンあり

「皇后陛下、もう言い逃れはできませんよ」

「皇太子っ……!」


 ダミアーノを倒したあと、レオナルドは迅速に動いた。
 彼は、魔女裁判によって世間の注目を自分たちに引き付けている間に、臣下たちに皇后派閥の屋敷や事業などを徹底的に調査させていた。
 そこで、人工の魔女のマナの研究に関する証拠品を確保していたのだ。

 更に、あの魔女裁判の会場でダミアーノらが所有していた、生物を魔獣に変容させる魔道具。それらは、遡ると全てが皇后へと辿り着いたのだった。

 レオナルドは全ての証拠を揃えて皇帝に交渉した。
 そして現在、緊急で御前会議が開かれているところだった。


「ソボルディナーレ伯爵の地下室から、若い女性の変死体が複数見つかっています。彼女たちは血を抜かれ、一部の臓器も抜き取られておりました。闇魔法の使用後とみられる魔法陣も見つかりました。
 これらは、皇太子位までしか入室できない書庫に保管されてある、魔女のマナの文献と同じものです」と、アルヴィーノ侯爵が説明をする。

「若返りの魔術の一種です。そうですよね、皇后陛下?」とレオナルド。

「ぐっ……」

 皇后は赤面しながら悔しそうに皇太子を睨み付けた。レオナルドはそんな恐ろしい視線も意に介さずに、側近に続きを促す。

 書類を読もうとするアルヴィーノ侯爵の顔が、一瞬だけ曇った。

「他にも、家畜や、そして…………子供の死体もございました。帝国各地で発生していた、行方不明事件の子供たちの特徴と一致しております」

 議場が水を打ったようにしんと静まり返る。恐ろしい事実に、誰もがぞくりと粟立った。
 罪のない命。女性に、子供。しかも、わざわざ誘拐までして。皇后という高貴な女性が、今では悪魔みたいに見えてくる。

「更に――」静寂の中、アルヴィーノ侯爵が続ける。「こちらの事件ですが、全ての罪を皇太子殿下に着せようと公文書の偽造まで行っておりました」

「なんと……!」

「そんなっ……」

 今度はにわかに騒然となった。ざわざわと部屋全体が波立っている。

 皇后は、そこまでして第二皇子を立太子させたかったのか。
 確かにあのスキャンダルまみれの無能皇子なら、そこまでお膳立てしないと皇太子にはなれまい。
 それにしても、罪もない帝国の民を犠牲にする必要があるのか……。
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