もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜


「終わったな」

「父上」

「皇帝陛下」

 共に廃后の処刑を見守っていた皇帝が席を立った。皇太子と伯爵令嬢は慌てて立ち上がって、(こうべ)を垂れる。

「あれは有能な皇后だったのだが、欲望は抑えられんかったか。分不相応に多くを望み過ぎた」

「そうかも、しれません……」

 皇太子はもう一度断頭台を眺める。そこはもう死体の片付けが完了していて、僅かに血痕が残っているだけだった。

「この不名誉な騒ぎを収めるためにも、お前たちの婚姻の日取りは早めないといけないな」

「恐れ入ります、父上」

「恐縮の至りでございます」

「リグリーア伯爵令嬢は――」

 不意に皇帝はキアラを見た。

「あれと違って、偉大な皇后になることだろう。
 ――レオナルド、彼女と……その貴重な能力(マナ)も大切にな」

「っ……!」

「!」

 二人は驚きで身体を硬くして、目を見張った。
 少しの沈黙のあと、

「……やはり、お気付きでしたか、父上」と、レオナルドが苦笑する。

 皇帝は全てをお見通しだとははっと声を出して笑って、

「その能力は使い方を誤ると、帝国は滅びの道を歩むだろう。だが、お前たちなら、この国を更なる繁栄へ導くことができるはずだ」

「恐れ入ります、父上」

「精進して参ります、皇帝陛下」

 皇太子と伯爵令嬢は、深く頭を下げる。
 皇帝は上機嫌でその場を去って行った。


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