もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

 キアラが二人の関係に気付いたのは、最悪にも地下牢で自身の処刑の決定を告げられた日だった。

 その頃の彼女はダミアーノのためには何でもやって、汚い仕事にも手を染めていて、それが世間に知られて更に覚えのない罪も着せられて。わけもわからずに、寒くて薄暗い地下牢に放り込まれたのだ。

「ダミアーノ様!」

 愛する婚約者の顔を認めた途端、全身から喜びが溢れ出す。あぁ、やっと愛しの王子様が私を救いに来てくれたのだと。

 だが彼の後ろからちょこんと現れた令嬢を目にした途端、彼女の表情はみるみる曇った。

「うわぁ〜! 本当に乞食みたい。汚ぁ〜い! 惨めなこと!」

 キアラは一瞬マルティーナが何を言っているのか分からなくて、目をぱちくりさせる。
 しかし次のダミアーノの言葉で、世界が暗転したようなとてつもない衝撃を受けた。

「だからティーナには刺激が強すぎるって言ったんだよ。これから処分されるゴミ(・・)なんて目に入れる価値もない」

 初めて聞く冷たい声音と初めて見る冷たい瞳に、キアラの心臓は凍り付いた。
 思考が、追いつかない。

「っ……っ…………」

 あまりのショックに言葉も出ない。
 ただパクパクと唇を動かして、目の前の二人を見つめるだけだった。
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