もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
応接間に一人取り残されたキアラは、呆然とソファーに座っていた。
彼女は婚約者が無理に口づけをしようとしていないことは分かっていた。ただ確実に帰す理由が欲しかっただけ。
ダミアーノは、自分になにかしようとしていた。
それは、あの日のパーティーでの休憩室と同じように。
(あの黒い煙のようなものは何だったの……?)
婚約者への愛という泥沼へ意識が落ちそうになったとき、彼女には見えていた。
得体の知れない黒いもの。
それを認めた瞬間、逃げなければと思った。丁度そのとき、自分の肉体の延長上のなにかが爆ぜた。
何が起こっているか全く分からない。
一つたしかなものは、またもやダミアーノを愛しそうになったのを、直前で阻止できたということだ。
そして彼は、自分に何かしようとしている。