もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
レオナルドは今は敢えて政治には手を出していなかった。皇太子としての最低限の義務を果たしているだけだ。
きっと現段階で自分が重要な政にまで手を出したら、途端に皇后と衝突してしまうだろう。それはまだ時期尚早だと考えたのだ。
だから、まずは経済から攻めようと思った。この分野は皇后派閥の影響力も、そこまで強くない。
それに経済は戦にも政にも密接に繋がっている。多くの富は、それだけで武器になるからだ。
レオナルドが最初にやったことは秘密裏に商会を設立することだった。
幸いなことに、彼には過去六回分の記憶があった。国内外の情勢の動向や主要な事件、貴族の陰謀……。それらは商会の運営に大いに役立つことだろう。
(まずは皇后の息のかかっている商会を潰すことからだな……)
淹れたての熱い紅茶を飲みながら、彼はぼんやりと今後の計画を練っていた。
何度回帰してもはじめは順調なのだ。しかし悔しいが最後はいつも敗北を喫しているので、今回も僅かな油断が命取りだ。
紅茶のほんのりとした甘みが、身体を満たしていく。
そういえば、一年もしたら紳士たちには紅茶より珈琲を飲むのが人気になるんだっけ。
あの独特の芳醇な香りと渋みは癖になる味だが、自分はこの赤い色をした紅茶のほうが――、