もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

「っ……!」

 不意に、リグリーア伯爵令嬢の顔が頭を過ぎる。

 彼女の瞳は、普段はこの紅茶のような赤茶色だったが、あの時は血のような赤味を帯びていた。
 それに、これまでに感じたことのないマナの気配。似たような空気をヴィッツィオ公爵令息からも感じたが、彼女とは濃度というかそもそもの質が異なる感じがした。

「あれは魔女の魔法というものなのか……?」


 彼は先日、敵対派閥の関与する地下組織から押収した魔道具を思い出した。
 その中には、これまで触れたことのない魔力が封じられていた。その力は、あの日に感じた不思議なマナに似ている。

「……まさかな」と、レオナルドは冷笑する。

 七回目で初めて対面した伯爵令嬢は、陰謀を企てたり目的のために平気で人を殺めるような人間にはとても見えなかった。ただの美しい妙齢の令嬢だ。

 しかし過去六回の陰謀の陰には、全て彼女が暗躍していたのも事実だった。

「あの妙なマナが関わっているのか?」

 レオナルドはキアラのことが気になって仕方がなかった。彼女は自分を何度も破滅させた女だというのに。
 だが妙な胸騒ぎが、ずっと己の中で疼いているのだ。

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