もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

「失礼」キアラはコホンと咳払いをしてから「250よ。私は金貨250枚払います!」

「500だ」

 すかさずレオナルドの攻撃。彼としても絶対に負けられなかった。

 半年後の起こる予定の東部の洪水。その後、小麦は全て皇后派閥の貴族と商人に買い占められて、価格の高騰はすさまじかった。

 彼らは欲望のままに暴利を貪って、食料品は庶民たちには手が届かなくなり、餓死する者も少なくなかった。その結果、東部は荒れてて平民たちの生活は苦しみと隣合わせになってしまうのだ。

 そんなこと、自分がさせない。そのためにも、先んじて小麦を購入しておく。
 皇族は国と民を守ることが、存在する意味なのだから。


「ごっ……ごひゃく…………!?」

 とんでもない額にキアラは恐れおののく。
 500って。500なんて。どれだけお金持ちなのかしら。

 今、自分が最大限に動かせる予算はせいぜい金貨350枚だ。当然500には届かないし、他の事業にも費用を回したい。

「キアラ様、キアラ様」

 皇太子に虚を衝かれてカチコチに固まったキアラに、共同経営者が耳打ちをする。

「これ以上は正攻法でいっても厳しいです。ここは個人的に交渉を行いましょう」

「交渉?」

「はい! 隣の男と話し合いの場を設けるのです。そこで条件や金額を交渉して、二人で分配できるように持っていきましょう」

「分かったわ……!」

 ジュリアが一緒にいてくれて良かったと、キアラは改めて思った。ダミアーノの執務は手伝ったことはあるものの、本格的な事業なんてこれまでやったことがないからだ。本当に、頼りになる相棒。

 商売は初めてでも、交渉だったらダミアーノの代理で何度もやったことがある。全部は無理でも、半分……せめて三分の一は確保したい。
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