もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
交渉事が終わるとレオナルドは足早に店主のもとへ向かって、
「済まないが、今回は彼女に全てを譲ることにした。300払うそうだ」
「さっ、さんびゃくぅっ!?」
キアラは彼の背後で悲鳴を上げる。金貨300枚なんて、言っていない!
彼女の狼狽える様子を見て、レオナルドはニヤリと意地悪そうに笑った。計画を潰されたささやかな仕返しらしい。
とんでもない金額に頭が真っ白になって思考停止した主人の代わりに、ジュリアが交渉をして250まで値下げを成功させた。店主としては最初の100でも十分だったので、幸運である。
肩を落とすキアラと慰めるジュリアが店を出ると、レオナルドが待ち構えていた。
「な、なんですか? 今日の件は忘れると申しましたでしょう?」と、キアラは警戒する。
「いや、それは俺の中でも既に終わったことだ。リグリーア伯爵令嬢――」
彼は彼女の顔にずいと自らの顔を近付けて、
「その赤い瞳は……いつからだ?」