もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
しかしまだピースが全て揃っていない。
今、迂闊に動くのはいかがなものかと思った。不確定なのに行動を起こして自滅して、皇后派閥に付け入られるようなことがあれば最悪だ。
それに、
(彼女はヴィッツィオ公爵令息の婚約者……。油断してはならない)
キアラは過去にレオナルドを陥れた人物だ。それも、何度も。
だから今回も十分に警戒しないといけないと思った。もしかしたら、これも彼女の罠かもしれない。
だが……、
(本当に彼女は陰謀を企むような人物なのか?)
七回目にして初めてキアラと対面したレオナルドにとって、その違和感はずっと心の隅で引っかかっていた。
彼女は他人の命を奪うような、恐ろしい計画を企てるような人物に全く見えなかったのだ。
その双眸は、赤い色だけ気になるが、まっすぐで、後ろめたいことは一つもないような正直な印象だった。
(これから婚約者によって黒く染められていくのか……?)
その可能性は高いと思った。これまでの過去の全てにおいて、彼女の悪事が開始するのはもっと後での出来事だ。
おそらく何かしらの事情があって、婚約者から命令されているしか考えられなかった。弱味を握られてか、はたまた恋心が暴走したのだろうか。
そんな風に想像を巡らせると、己の仇敵のはずなのに、少し可哀想に思えてきた。
……きっと、今回も婚約者に利用されるのだろう。