もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜


「リグリーア伯爵令嬢」

「は、はいっ!」

 レオナルドは改めてキアラを見る。やはり色は赤いが、悪人の瞳にはとても見えなかった。

 一方キアラは、皇太子に急に見つめられてドキリと心臓が跳ね上がった。

 力強い双眸。新緑を思わせるエメラルドグリーンの爽やかな瞳なのに、魂の底から真っ赤に燃えているような瞳に吸い込まれそうになる。
 この瞳の前に、嘘は通用しないと焦りを覚えた。

 レオナルドは少しのあいだ彼女の目をじっと見てから、

「人として、外れた道へは絶対に進むなよ」

 とても失礼なことを言い放った。

「っ……!」

 次の瞬間、彼の顔は赤く染まる。どっと後悔の波が襲ってきた。

 使命感のあまり勢いで言ってしまった。こんなに美しい瞳の彼女に、誤った道へ進んで欲しくないと思ったのだ。

 だが傍から見れば、見ず知らずの令嬢にとんでもないことを言っている。あまりにも軽率すぎる自分に嫌悪感を抱いた。

 七回目の自分はなんだかおかしい。想定外のことばかり起こって調子が狂いっぱなしだ。

 でも、
 リグリーア伯爵令嬢のことが、気になって仕方ないのだ。
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