もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
「は……?」
キアラは静かに怒っていた。
なんて失礼な人かしら。何度か偶然会っただけの関係なのに、なにを知ったようなことを……。
(そんなの……自分が一番分かっているわよ!)
キアラは回帰する度に後悔も繰り返していた。ダミアーノへの愛情はもちろん、自分が人の道を外れていっていることをだ。
ダミアーノの命令に逆らえなくて……いや、彼の役に立ちたくて、なんでもやった。
それは平常な精神だと絶対に拒否をするような、非道なこともだ。
だってダミアーノに嫌われたくなかったから。
ダミアーノからもっと愛されたかったから。
「い、いや……その、だな」レオナルドは焦って挙動不審になる「あの……貴族として、だ。お、俺も皇族として曲がった道へは進まずに、民のために精進しよう。だから……その……。と、共に素晴らしい帝国の未来を作ろうじゃないか!」
それは無理矢理に作ったなんともお粗末な言い訳だった。
「失礼します」
「あっ……!」
キアラはレオナルドの顔も見ずに、逃げるように辞去した。なんだか過去の悪行を責められているみたいで苦しかったのだ。
黒く染まった自分が、帝国の明るい未来を作るなんて。
そんな、おこがましいこと、自分にはできない。
これからの生き様を考えれば、みるみる暗澹とした気持ちになった。
(私はまた人の道を外れるの?)
キアラはただただ恐ろしかった。
もう人なんて、殺したくないのに。