もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜


(まさか……キアラ・リグリーアも回帰しているのか……?)

 彼ははっとなって、急激に背筋が凍る。
 そう考えると全ての辻褄が合った。小麦の投資はもちろん、彼女の行動。あれは婚約者から逃れようとしているのではないだろうか。

 凱旋パーティーではヴィッツィオ公爵令息を避けようとしている素振りだった。少なくとも、現段階では好意を寄せているようには見えなかった。

(彼女も未来を変えようとしている……?)

 それは、あの赤い瞳と関係あるのだろうか。
 考えれば考えるほど不可解なことだらけで、頭が痛くなった。

 まずは確証を掴むところから始めようと思った。
 彼女はどこまで知っているのか。過去の行動は己の意思なのか、あるいは本意なのか。
 魔法は本当に使えないのか。過去も赤い瞳になったことがあるのか。それは先天的なものなのか、後天的なものなのか。

 そして……これからどうしたいのか。

 彼女の返答次第では、過去のことは水に流しても良いと考えた。この終わらない世界から一緒に抜け出せるように。
 もし彼女が婚約者や皇后派閥と決別したいのなら、手を結んでも構わない。

(いや……)

 レオナルドは苦笑する。そんなゴタゴタした理屈ではない。
 キアラの本当の気持ちを知りたいと思っただけなのだ。

 ただ彼女のことをもっと知りたかった。

< 57 / 221 >

この作品をシェア

pagetop