もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
◇
「はぁ……」
二人だけの秘め事が終わってベッドで愛の囁きを交わしていると、突然ダミアーノがため息をついた。
「……今日は、荒れているのね」と、マルティーナは苦笑する。
「あぁ……」
彼は一拍黙り込んでから、
「上手くいっていない」
不機嫌そうに答えた。
「リグリーア伯爵令嬢のこと?」
「それ以外あるか」
「もうっ」マルティーナはくすりと笑う。「本当にあの子のことが嫌いなのね」
「当然だろ? 初対面の時からオレはあの女が大嫌いなんだよ」
陰気臭い女。
それが、ダミアーノのが最初に受けたキアラの印象だった。
烏のような黒い髪に地味な赤茶色の瞳。両親の陰に隠れておどおどしていて、挨拶もろくにできない詰まらない令嬢。
おまけに顔もさえないし。スタイルは良いが、女にしては背が高すぎると思った。
彼の好みはマルティーナみたいな可愛らしい女の子。
華やかで、華奢で、愛嬌がある――そんな守ってあげたいと思うような可憐な令嬢だった。