もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

13 覚醒

「キアラ様……ヴィッツィオ公爵令息がお越しです」

 なんとも言えない渋面を作ったジュリアがキアラに告げた。

 主から婚約者が不貞をしていると聞いていた侍女は、浮気者に汚い言葉を投げ付けて追い返したかったが、平民の自分がどうこうできる相手ではなく不承不承受け入れたのだった。

 たちまちキアラの高まった気分はだだ下がりになって、まるで苦い食べ物を口にしたみたいに顔を歪める。主の気持ちが痛いほど分かるジュリアは「申し訳ありません」と、ただ頭を下げるしかなかった。

 キアラは苦笑いをして、

「いいのよ。公爵令息様には誰も逆らえないわ。――二階の執務室にお通しして」

 銀貨の詰まった小袋を侍女に渡した。

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