もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

(あなたがミア子爵令嬢と遊んでいるあいだに、私たちは一生懸命やってきたのよ!)

 でも、そんな怒りは呑み込んで彼女は笑顔でやり過ごす。ダミアーノに感情を向けるのは無駄だと思った。
 どうせ無関係になる人間だ。自分の大切な()をぶつけるのは勿体ない。

「だが、程々にな。君は婚姻前の令嬢なんだ。あまり、はしたない行為は避けるように」

「かしこまりました。肝に銘じます」

「……もっと早く知っていたら、オープン前に間に合わせたのだがな」

「えっ?」

 ダミアーノが合図をすると、従者たちがぞろぞろと部屋に入って来た。両手には大きな花を抱えている。
 キアラが唖然としていると、あっという間に部屋中が美しい花々で満たされた。

「すごい……ですね……」と、彼女は目をぱちくりさせる。強い花の香りが鼻腔をくすぐった。

「婚約者として当然のことだ。本来なら開店時には店に飾って貰いたかったのだが、なにせ聞いたのが今日の午前中だったからな」

「……申し訳ありません」

 キアラはしおらしく頭を下げるが、

(ダミアーノ様が帰ったら捨てましょう。……いえ、売り払ったほうがいいわね。少しでもお金に変えるのよ)

 既に心は決まっていた。
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