もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
「改めて開店おめでとう、キアラ」
「っ……!?」
キアラが顔を上げた瞬間、眼前にはダミアーノの顔が迫っていた。
彼の口元が、ニヤリと不気味に弧を描く。
(黒い……!)
キアラは戦慄する。それは、あの時と同じような――黒い瞳。
少しのあいだ彼の瞳に釘付けになる。終わりのない深い闇に吸い込まれるみたいに、頭が徐々に黒く染まっていく。
(どういうこと……? 部屋全体が……!?)
氷のような冷たさを感じてはっとなって周囲を見渡すと、花々から放出された黒い煙のようなものが室内に充満していた。
(な、なによ、この匂い!)
ぬるりとした湿っぽい生臭さが、彼女を包み込む。それは瞳にも到達して、しみるように痛んだ。