もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
◇
「リグリーア伯爵令嬢!!」
レオナルドが勢いよく扉を開ける。
彼は今朝から彼女を監視していた。ヴィッツィオ公爵令息が持ち込んだ花から異様なマナを感知した彼は、制止するジュリアや店の警備を振り切ってここまで駆け上がって来たのだ。
「っ……!」
部屋の中の異様な光景に、彼は凍り付く。
魔道具と同じまやかしの魔女のマナが急激に膨らんだと思ったら、今度は――本物の、魔女のマナ。
それは紛うかたなきキアラ・リグリーア伯爵令嬢から放たれたマナだった。
黒いマナは消え去り、ダミアーノの肉体はキアラのマナに弾かれて壁に打ち付けられている。
「あら、申し訳ありません、ダミアーノ様……」
キアラのかつてないほどの低音が、赤い部屋に底冷えするみたいに静かに響く。
「私の唇は、安くないのよ?」
彼女の顔は、冷酷と残酷が極まった――魔女そのものだった。
キアラはやっと理解した。
自分はダミアーノの魅了魔法に操られていたのだ。
もう、
ずっと。