もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

「……ぶつかって来たのはミア子爵令嬢のほうですわ。お茶をこぼしたのも自業自得です。むしろ、私の名誉を傷付けたことを謝っていただきたいわ」と、キアラは毅然として言う。

 これまでの彼女とは違う堂々とした態度に、ダミアーノは少し怯んだ。

「嘘をつくな! 傲慢にもほどがあるだろう! 君が謝るんだ!」

「私のほうからぶつかったという証拠はあるのですか?」

「なっ……! 現に彼女が泣いているじゃないか。君がやったとした思えない」

 キアラは鼻で笑う。

「ずいぶん非論理的な証拠ですわね。まるで婚約者の私より、そちらの子爵令嬢を愛しているような……?」

 彼女の衝撃的な発言に場はざわめいた。ダミアーノもマルティーナも途端に顔が真っ青になる。

「で、でたらめを言うな!」とダミアーノ。

「そうですよ! わたしたち、そんなのじゃありません!」とマルティーナ。

「あら、息もピッタリね。お熱いこと」と、キアラの皮肉。

「ふざけるなっ!」

 ダミアーノの怒号が会場内に響く。
 冷ややかな空気が一瞬で遠くまで広がっていった。
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