もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

 ――でも、それでいいの?

 ダミアーノは悪意を持ってキアラを利用して、最後は冷酷に捨てていた。最初の人生からずっとだ。

 このまま縁を切って「はい、さようなら」と離れるだけで良いのだろうか。
 手切れ金を支払って、二度と関わらない人生で良いのだろうか。

 嫌いな婚約者と別れたダミアーノは晴れてマルティーナと結ばれて、二人は幸せに暮らすだろう。

 ――それで、いいの?

 堰き止められた濁流が一気に開放されるように、どくどくと脈が速くなる。心臓がぎゅっと痛んで、脂汗が出た。

 二人に散々虚仮(こけ)にされたのに、何もやり返さずに逃げるように舞台から去って……その後は穏やかに暮らせるの?

(それじゃあ……私は今回も惨めな負け犬のままじゃない……!)

 逃げたいと思った。
 でも、もう逃げたくないと思った。

 今の自分には、魔女のマナがある。
 それは、ダミアーノと戦える武器になる。

 キアラは顔を上げる。その赤い双眸は、色に負けないくらいの熱い炎が灯っていた。

(このままじゃ、引き下がれない……。ダミアーノ・ヴィッツィオ公爵令息……必ず復讐してやるわ…………!)

 今度こそ……!
 
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