もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

「一生……」

 その言葉が、キアラの胸に深く突き刺ささった。

 ダミアーノの行動を顧みると、彼の背後に皇后が関わっているのは疑いの余地はない。
 過去の全てにおいて、彼らは皇太子を排除して第二皇子を後継者の座に就かせている。当然、今回もそのつもりなのだろう。

 その陰謀のために、キアラは過去六回もダミアーノから使い捨てにされた。
 そんな非道な彼らに、今度は自分に魔女の力が宿ったなんて知られたら…………、

(もっと酷いことになる……!)

 にわかにキアラの顔が真っ青になって、ガタガタと震えはじめる。六回分のトラウマが塊となって襲いかかって、彼女の心を激しく掻き乱した。

 レオナルドはその変化にすぐに気付いて、

「っ……! 済まない、君を傷付けるつもりもm脅すつもりもなかったんだ。ただ、どちらに付けば利になるか考えて欲しくてだな……」

 しどろもどろに言い訳を並べた。女性を困らせるつもりはなかった。彼女の()()を、自らの意思で選択して欲しかったのだ。

「こ、これは立派な脅迫です……!」と、キアラは涙目で訴える。

「わ、悪い……」令嬢の涙に弱い皇太子は少しだけ怯んだ。「その……私から見て、君はヴィッツィオ公爵令息と婚約解消をしたいのでは……と、思えてな……」

 彼女は弾かれたようにはっと顔を上げて、

「なぜ、それを……?」

「今日も、先日のパーティーも、とても婚約者に未来を委ねようとする態度ではなかった。それに――」

 レオナルドは慌てて口ごもる。彼女も自分と同じく、回帰を繰り返している(・・・・・・・・・・)のではないかと尋ねそうになったのだ。

 だが今は、それを聞くべきではないと考えた。
 なんだか、彼女の尊厳を傷付けるような気がして。いつか彼女自身の口から告白してくれる日を待ったほうが良いのではと、なんとなく感じたのだ。
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