もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
「いや……その……」レオナルドは頭を振る。「私は、君と取引がしたいのだ」
「取引、ですか……?」
思わぬ提案に、キアラは目を瞬いた。
「あぁ。知っての通り、私は皇后派閥と敵対している。だから一人でも多く信頼できる味方が欲しい」
「私が……信頼できると……?」
「君はこのまま皇后派閥にいても、なんのメリットもないだろう? その魔女のマナが露見しないかと怯えて過ごして、もし知られてしまったら、彼らに生きた魔道具の如く利用されるのが明白だ。敵の敵は味方ということだ」
「……随分と楽観的なんですね。私が殿下を裏切らないとでも?」
「裏切らないさ。何故なら私は、唯一君を悪意から保護できる立場だからな。私なら、令嬢を皇后派閥の魔の手から守ってやれる。それしか君が生き残る方法はない。ならば、裏切る理由もない」
「それで……具体的には、殿下は何を要求したいのですか?」と、キアラは恐る恐る尋ねる。
皇太子が何をしたいのか、いまいちよく分からなかった。きっと自分を皇后派閥を倒すための切り札として利用するのだと思うけど……でも、守るとも言っている。
(それって、ダミアーノみたいに道具にはしないってこと? 私は……殿下を信じていいの?)
皇太子とは僅か数回だけの接触だが、公爵令息よりも人として立派なのは理解している。
――でも、魔女の力を手に入れたら?
途端に豹変して、駒として使い倒すのかもしれない。
そんなの、嫌だ。