もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
二回目以降はずっとこうだった。逆行したての彼女は、もうダミアーノに対して愛情なんてこれっぽちも残っていない。むしろ、憎しみの感情しか持っていなかった。
(この時点ではね……)
何度繰り返しても、最初はダミアーノとマルティーナの復讐だけを考えていた。二人とも殺したいほどに憎いと、今でも強く思う。
しかしダミアーノと関わるたびに、いつの間にか彼のことを好きになって、大好きになって、彼以外に何も見えないくらいに愛おしく思うようになって。
過激な嫉妬心はマルティーナ以外にも広がっていって。
最後はダミアーノの操り人形そのもので……彼のためなら何でもやった。
どんなに残酷なことも恥辱にまみれることも。
最初に逆行した二回目の人生は一番辛かった。
初めて覚える感情に本当に気がどうかなるかと思った。ダミアーノに対する憎悪と愛情で心をかき乱されてぐちゃぐちゃになって、それはもう自分でコントロールできる状態ではなかったのだ。
キアラはなんとか苦悩に耐えようとしたけれど、心は底なしの泥沼に沈んで行くみたいにどろどろと溶けていった。
偶然知った恋人たちの密会場所。
そこで激しく愛し合う二人を血の涙が出るくらいに口惜しく見つめながら、身体の奥は熱くなって頭の中がぐちゃぐちゃになった。
もう見たくないのに、吸い寄せられるようにずっと二人を見ていた。
でも繰り返すたびにだんだん慣れてきて、二回目のような苛烈な感情は薄れてきた。
それでもダミアーノを愛する気持ちは変わらなくて、相変わらず最後は彼の操り人形になってたくさんの悪事に手を染めて処刑されていった。
(もう、あんな思いはしたくない……)
キアラは決意する。今度こそ今度こそ今度こそ、運命を変えてやる、と。
……それは、二回目以降は毎回考えることだったけど。