もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

18 契約内容

 あれから数日経って、キアラは仮の婚約の契約条件の取り決めのために、皇太子の宮殿に訪れていた。

 初めてここに来た時は、意識を失って運ばれたのもあり景色をは目に入れる余裕はなかった。
 しかし改めて足を踏み入れると、豪奢だが荘厳な造りに彼女は圧倒されてしまった。

 隣ではジュリアが瞳を輝かせながら調度品の鑑定をしている。その金額を聞くたびに、恐ろしさがひゅっと込み上げてくる。

(私は……本当に凄い方と婚約するのね……)

 伯爵令嬢の自身との格の違いがまざまざと伝わってきて、彼女は今更ながら少し怖気づいてしまった。

 あの時は魔女の力に覚醒して、激しい興奮状態で勢いよく契約の承諾をしたが、もっと慎重に考えたほうが良かったのかもしれない。
 たしかに皇太子は信頼できる人物だと思うが、過去六回もダミアーノに騙された自分自身のこと(・・・・・・・)が信じられない。正直、不安は消えていなかった。

(殿下は……大丈夫よね……?)

 あの時は本当に優しい方だと思った。この方なら手を組んでもいいと思った。
 でも、ダミアーノに対しても……ずっとそう思っていたのだ。

 婚約者から再び裏切られるのが怖かった。

 だから今日は、なるべく平等になるような条件に持っていこうと考えていた。
 過去の自分は婚約者の言いなりだった。
 今回も……別の意味で言いなりになってしまうのかもしれない。身分はもちろん、彼の優しさというぬるま湯に包まれて。

 たとえ仮の関係だとしても、もう婚約者と上下が付くような関係は避けたかった。

(他人に気を許してはいけないわ、キアラ!)

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